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低く流れる 낮게 흐르는 / ビョン・ヨングン

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大きな滝を探し求めながら、私はついにそこへ辿り着くことができませんでした。けれども、偶然立ち寄った滝は、驚くほど素朴で、穏やかな余韻をたたえていました。これまで足早に通り過ぎ、迷い続けてきた道の美しさに、私は気づいていなかったのです。 名所や絶景とは、草原や雲、上り坂と下り坂を幾度も越えてはじめて、ひとつの風景として完成するものなのだということも。 道の途中で出会ったすべてのものと溶け合い、心が満たされると、私はもっと低い場所へ流れていきたいと思いました。水面に触れ、やがて静かに流れ続ける水の道のように。 ――ピョン・ヨングン ***** 低く流れる水のように 自分自身を見つけていく旅 2018年にインディペンデントに出版されたビョン・ヨングンさんの『低く流れる』は、装丁とカバーデザインを新たにし、8年の時を経て、リニューアル出版されました。 初版刊行後、本作はグラフィックノベルの読者のあいだで静かな反響を呼び、繊細な水彩表現と、見る者を引き込むイメージ演出によって、深い印象を残してきました。 垂直に落ちる滝、水面にかすかに立ちのぼる水しぶき、光を映す岩肌、足首をやさしく包み込む水の流れ。異国を旅する一人の青年の歩みに寄り添うように、美しい風景が次々と広がっていきます。 風景は、青年をそっと自然の奥深くへと導いていきます。 急流のように激しく流れ、岩にぶつかり、幾重にも折れ曲がりながら、やがて静けさへと変わっていく水。低い場所を目指して流れ続ける水のような青年の旅路が、豊かな没入感とともに描かれています。 喧騒から静寂へ 心にゆっくりと染み込む風景 少人数ツアーで訪れた、森の中の有名な滝があります。人々は美しい景色をカメラに収めようと、忙しなく立ち回っています。名所を巡り、SNSに投稿する写真を撮り、水に入り、限られた時間を消費していきます。 その喧騒の中で、青年は数枚の写真を撮ると、その場を後にします。やがて彼は一人で、滝を探す旅に出ます。賑やかな観光地を離れ、ただ歩き始めるのです。 空に浮かぶ雲を見上げ、遠く連なる山々のなだらかな稜線を、長い時間眺めることもあります。ときおり、偶然出会った小さな滝の前で、静かに足を止めます。 『低く流れる』は、豊かな自然の風景が、心の奥へとゆっくり染み込んでいく物語です。作者は一切のセリフを用いず、青年の旅を描き出しています。生い茂る山林や熱帯の木々、岩肌を伝って流れ落ちる水、森の中に差し込む光と、そこに生まれる影。 音の消えた世界の中で、滝の水音や、かすかな風の気配が、読む者の感覚を静かに呼び覚まします。とりわけ、遠くから自然を見つめていた青年が、わずかな心の揺らぎを経て水に足を浸す場面は、思わず息を潜めて見守りたくなる、印象的なシーンです。 緻密に設計された場面のリズムによって、自然と青年がひとつになる静謐な瞬間が、心に刻み込まれるように、丁寧に描かれていきます。 新しい道へ踏み出す勇気 深い余韻を残すエンディング 青年は、歩き続けます。滝を探す旅は、やがて人生の方向や速度を見つめ直す問いへとつながっていきます。 「このままでいいのだろうか」 「自分は、どこへ向かえばいいのだろうか」 青年は、常に繋がり続けるスマートフォンを手放し、オートバイや自転車ではなく、「歩く」ことを選びます。これまで恐れてきた未知の道を、一人で進む決意をするのです。 誰もが知る滝ではなく、自分だけの滝を探すという選択。立ち止まり、周囲の美しさをまっすぐに受け取りながら生きていこうとする意志を胸に、青年は再び歩き出します。 作者は、目的地を定めて出発しながらも、ときに思いがけない場所へ辿り着く旅になぞらえ、青年の葛藤や感情を、静かに、しかし鋭敏に描き出しています。 物語の終盤では、広大で静まり返った平原、鬱蒼とした森の道、果てしなく続く未知の風景と、一人の人間の姿が対比されます。そこには、自分自身を見つけていく青年の姿が、淡々と、しかし確かな存在感をもって描かれています。 灼けつく太陽の下、勢いよく落ちる滝の水で身体を清め、新たな道へと向かう青年の後ろ姿を追っていくと、いつの間にか心の奥に、瑞々しい緑の気配が、そっと満ちてきます。 絵: ビョン・ヨングン 변영근 出版元:四季 H280mm×W210mm/64P/2026 *Overseas shipping OK *Free shipping on orders over ¥ 10,800 in Japan only. Overseas shipping charges apply.

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