



京都市内で自営業をしている女性たちが集まって制作したリトルプレス『NEKKO』。
創刊号「選挙」に続き発行された2号目のテーマは「自治」。
「自治」ってなんだろう?という、スタート地点から、地に足のついた事例について、福井から、滋賀から、京都から、具体的に取り組んでいる人たちを紹介しています。
とくに心惹かれたのは、京都に根付いていた子ども文庫(自宅の一室を開放して小さな図書館とする家庭文庫のこと)の記事。
京都で生まれ育った自分も知らなかったのですが、1981年に京都市中央図書館ができるまで(よく通った思い出の図書館)、京都市は当時の政令指定都市の中で唯一、公共図書館が存在せず、そんな背景から、戦後60年代ごろから全国各地に作られていた子ども文庫が70年代に京都でも一気に増え、230箇所もあったそうだ。(それだけでなく地域の集会所などに設置された地域文庫も盛んだった)。そして、そんな子ども文庫を地盤にした「自治力」が、やがて京都市の図書館行政を動かし、公共図書館の設立に至った歴史があるのだそう。
“1954年に日本図書館協会が採択した「図書館の自由に関する宣言」を始めその後の実践の中で「国民の知る権利を保障する」ことが位置づけられた。国民があらゆる情報に自由に接し、自分の頭で考え、判断して行動する。そのサポートをするのが図書館と司書の任務とある。それは戦前に戦争に協力してしまった図書館界の反省だった。
今、日本中の図書館で業務の民間委託や民営化が進んでいる。おしゃれなカフェがあり、話題の本が並ぶ図書館が人気になっているが、果たしてそれでいいのだろうか。そこには知る自由を保障するものがあり人が居るのだろうか。京都の図書館も市の財政危機から競争入札より安上がりの指定管理者を選んでしまう恐れは常にある。子ども文庫の人々の長い長い図書館運動が守り築いてくれたものを見直し学ばないと、大切なものを手放すことになってしまう”〜本文より
この一文から、以前観たドキュメンタリー映画『ニューヨーク公共図書館』を思い出しました。あんな図書館があったなら…自分で考えて行動するためのエネルギーを養える場としての図書館が日本でも増えますように。
今回の号を読んで一番驚いたのが、京都市の市街地の地下を掘削し通すという北陸新幹線京都延伸計画や、植物園と北山エリアの再開発の話(そんな計画があったなんて)。その問題に対して、自分の暮らす町のことは自分たちで決めていくという市民の自治力がちゃんと発揮されてほしいと願うばかりです。
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「自治はじじむさいか」。今の暮らしや街の変わりようを見ていくとなんか自分たちの望むように進まない。それどころか、どんどんと大切に育ててきたものが切り取られていく、市民が活動しようとしてもその場がなかなか見つからない。つまりは自分たちの街を自分たちが作っているといった実感がない。それはどうゆうことだろう。そこに出てきたのが「自治」です。
自治という言葉について初めはそのタイトル通り古臭く面倒な町内会のようなものといったイメージしかありませんでした。編集部で議論を重ね、いろいろな方にお話やご意見をいただいていくうちにこれからの暮らしを市民自らが作るための大きな根っこがここにあると思えるようになってきました。
そんな暖かく、優しく、力強い自治の実践例をたどりながらこれからの暮らし方を考えられるような一冊となりました。
〜出版元レビュー
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◎目次
特集/自治はじじむさいか
自治って何でしょうか
あなたにとって自治とは何ですか
農村の今 米農家 島光さんの暮らし/ 島光毅 敦子
日々の暮らしに根ざす滋賀の女性たち/ 玉崎洋子
あなたにとって自治とは/
池永知美 東条雅之 佐々木真由美
それって自治?町の暮らしの中で/ 環の市
運動と呼ばれた自治1
学校の調理場に石けんを
運動と呼ばれた自治2
子供文庫
あれも自治?祭りという名の自治/ 左京ワンダーランド
トラブルだらけでにぎやかな「自治」/ 松村圭一郎
私たちの街の話をしよう / 井﨑敦子
そして自治はどこへ向かう?海外の自治/ 岸本聡子
表現者が政治に関わるということ 画家/ 小西煕
根っこの人/ 永井麻理 後藤由美子
ドイツからのお便り/ 船田クラーセンさやか
連載2/ 藤原辰史×井﨑敦子
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発行・編集:根っこマガジン
表記:日本語
H255mm×W180mm/36P/2021
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