
















2016年に創刊された韓国の写真誌『VOSTOK』。
毎号鋭いテーマを定めて、新しい感覚の写真と優れた文学の境界を往来する美しい写真誌です。
2021年7月に発行されたvol.28のテーマは“記憶”。
何かを記録するために写真を撮り、その写真を見て記憶を再び呼び起こすというプロセスは、私たちにとってごく自然に馴染みあることです。記録のツールであり、媒体である写真は、どうしたって「記憶」を喚起するしかありません。
今号では、さまざまな方法で自分と他人の記憶を丹念に探索する写真表現とエッセイに出会うことができます。紙面は四章で構成されており、第一章では、「場所、部屋、体」をキーワードに、私たちの存在について、その痕跡を見つめた写真によって記憶をたどります。第二章では5編のエッセイに遭遇します。 小説家ムン·モクハと詩人ペク·ウンソン、エッセイストのムルとキム·シンフェ、文学編集者カン·ユンジョンの5人の筆者は「最後の写真一枚」または「記憶と向き合うあるページ」をテーマにエッセイを書きました。第三章では「記憶の再構成」というキーワードを中心に記憶を様々な方法で再構成、再加工する写真が続きます。 そして第四章では、「過ぎ去った時間と消えた記憶」を喚起させる写真を集めて紹介します。
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なかでも、取り壊される公団住宅を記録し、取り壊された後に残った、そこに存在したものの破片をファイリングした作品。写真家・リュ·ジュンヨルさんの『不在のアーカイブ』が印象的でした。
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私が遁村住公マンションを知ったのは2012年、団地の隣の東北高校に通うようになってからだ。 学校へ行く一番早い方法は団地を横切ることで、それをきっかけに2015年から団地を記録し始めた。 2017年に遁村住公マンションは再建築の管理処分認可を受けた後、マンションがある遁村1棟がソウルで最も人口が少ない場所になるのに1年もかからなかった。
この写真は、住人の転居が終わり、撤去を控えたマンションの風景と、その後マンションで収集したものの大きく2つに分かれている。 写真の中にあるものの大部分は私の記憶ではない。 今ではマンションは完全に撤去され、消え去った建物の写真は記念碑のように残されている。 これらをより直感的に再構成することで、私の記憶の外にある、さまざまな物語を覗いてみたい。
ーーリュ·ジュンヨル『不在のアーカイブ』
https://junyeolryu.myportfolio.com/work
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3日間の日程を終えてから、私はその時の写真を二度と見ないだろう。 この文章が私が最後まで大事にしたい場面を代わりに残してくれるからだ。 3日間の勇気、優しさ、ありがたさ、ただ私に向いている輝く瞳が私の中に写真のように写っている。 私はその写真をいつまでも胸にしまっておくつもりだ. そして、いつかその写真は私を離れ、どこかへ向かうだろう。 あの時の私のように温かい心が切実な誰かに届くだろう。
ーーキム·シンフェ『心に込めた写真を一枚』
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また思い出して見たい風景は、私の人生ではいつも写真に撮られていない。 9年間、一緒に暮らしてきた猫の一番愛らしい瞬間も、夢の中の恍惚な夕焼けも、8歳の夏の夜の野外映画上映会も、すべて写真に収められずに流れてしまった。私はしかたなく大切にしたい瞬間を、頭の中で何度も繰り返し描くように広げてみる。 欠けた部分を復元するために家族によく「あれ覚えてる?」と聞く。 私たちはパズルを合わせるかのように、ひとつのシーンを一緒に完成する。
ーームル『写真になれなかった瞬間』
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記憶すべき死が、まるで私たちの記憶の限界値を試すかのように溢れ出る。 昨年から続いたパンデミックのために、特に医療服を着た故人の写真を見たし、ウイグルと香港とミャンマーとガザの隣人、そして私たちが住む土地で働いたり、仕事場で起きたことのために死んだ隣人の遺影写真など、まるで人類が互いに恐ろしい定期購読サービスを申請したりしたかのように、絶えることなく送られてくる。
ーーペク·ウンソン『そんなのなかったらいいのに』
編集:VOSTOK編集部
出版元:VOSTOK PRESS
表記:韓国語
H240mm×W170mm/260P/2021
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