1947年、二二八事件に始まる台湾激動の頃。民主化運動で傷つき、それまでの生き方を変えなければならなくなった家族。新聞記者の夫とともに、時代の波に飲まれないよう、家族のために生き、夫の秘密を守り続けて死んでいった春蘭(チュンラン)。残された二人の息子、平和(ピンホー)と起義(チーイー)は、弁護士と新聞記者として、民主化とは、平和とは何かを追求する。起義の息子、哲浩(ジョーハオ)は、歴史にも政治にも関心がなく、ゲイだと告白することで一歩を踏み出す。三代にわたる家族の確執を軸に、急激に民主化へと進む時代の波に翻弄されながらも愛情を深めていく一家の物語。
日本による植民地支配とその後の国民党の圧政…1947年の二二八事件後、物語は高雄へと移り、美麗島事件(1979年)、美濃の反ダム建設運動(1992年〜)、葉永鋕少年(少年Y)死亡事件(2000年)、七一一水害(2001年)高雄地下鉄工事におけるタイ人労働者暴動事件(2005年)、そして高雄の第一回プライドパレード(2010年)… 台湾で起きたこと、時代に翻弄されてきた家族。父・母・兄弟、移民労働者や同性のパートナーの視点も交えながら、台湾南部の現代史を描く。夜明けに向かって懸命に生きる人々へのエールが込められた物語です。
*****
近代台湾史を貫く民草の悲哀を重層的に捉えた作品だ。勇気と保身、執着と後悔、正義とその代償。何かを得るために何かを失うのが人生なのだとしたら、彼らは誰ひとり間違ってなどいない。
――東山彰良(小説家)
*****
◎プロフィール
著者:徐嘉澤(じょ・かたく/Hsu Chiatse)
1977年、台湾高雄生まれ。国立高雄師範大学卒業、国立屏東師範学院大学院修了。現在、高雄特殊教育学校で教鞭を執りながら、作家活動を行っている。
時報文学賞短編小説部門一等賞、聯合報文学賞散文部門一等賞、九歌二百万長編小説コンテスト審査員賞、BenQ華文電影小說一等賞などを受賞。高雄文学創作補助、国家文化芸術基金会補助などの助成を受けた。著書に散文集『門内的父親』(九歌出版、2009)、小説作品に『詐騙家族』(九歌出版、2011)、『窺』(基本書坊、2009/2013[新版])、『不熄燈的房』(寶瓶文化、2010)、『孫行者、你行不行?』(九歌出版、2012)、『下一個天亮』(大塊、2012)、『討債株式会社』(遠流、2012)、『秘河』(大塊、2013)、『第三者』(九歌出版、2014)、『鬼計』(大塊、2016)など。
訳者:三須祐介(みす・ゆうすけ)
1970年生まれ。立命館大学文学部教員。専門は近現代中国演劇・文学。翻訳に棉棉『上海キャンディ』(徳間書店、2002)、胡淑雯『太陽の血は黒い』(あるむ、2015)、論文に「林懐民「逝者」論:「同志文学史」の可能性と不可能性をめぐって」(『ことばとそのひろがり』6、2018)、「『秋海棠』から『紅伶涙』へ:近現代中国文芸作品における男旦と “男性性” をめぐって」(『立命館文学』667、2020)など。
著者:徐嘉澤
訳者:三須祐介
出版元:書肆侃侃房
表記:日本語
H196mm×W132mm/224P/2020
*Overseas shipping OK
*Free shipping on orders over ¥ 10,800
in Japan only. Overseas shipping charges apply.