
近年注目を集めている華語文学の新たな流れを紹介するシリーズ〈サイノフォン〉第一巻。
ここでいう「華語」とは、広く諸方言も含めた中国語を指し、世界各地の華人コミュニティや中国国内において、多元的、流動的、混成的に用いられる。
二十世紀以降のグローバリゼーションの波と華文文化の発展によって生み出された文学は、従来の中国中心主義の「中国文学」の括りに収まらない。サイノフォンとは、中国大陸を含め、東南アジアに根をおろし、枝葉を茂らせる華語文学の多様で豊かな広がりと声の響き合いを重視した文学概念である。台湾やマレーシアなどの声の響き合いから始まり、中国大陸にまで広がって、漢族の文学をも含んでいる。日本植民地時代の影響も大きい。各地の華語文学の系譜に注目し、歴史と記憶、アイデンティティ、移動する中国性の影響を捉え、国家や民族や政治への批判も含んだ対話を志向するものである。
第一巻は、その豊かな広がりを紹介するアンソロジー。香港の高層ビルからチベットの聖なる湖まで、シカゴのバーからマレーシアの原生林まで。小説、旅行記、詩、SFなど、多様な領域から世界を切り取る17篇。
◎目次
〈サイノフォン〉シリーズ刊行に寄せて 王徳威
Ⅰ 風土から見えてくるもの
シカゴの死 白先勇 小笠原淳 訳
『グッバイ、イーグル』抄 ダデラヴァン・イバウ 津守陽 訳
浮都ものがたり 西西 濱田麻矢 訳
『三十三年京都の夢』抄 朱天心 濱田麻矢 訳
Ⅱ はるかな音とイメージ
傷痕 宋沢莱 津守陽 訳
パトゥ 張貴興 松浦恆雄 訳
突然現れたわたし 李娟 濱田麻矢 訳
チュニック、文字を作る 駱以軍 濱田麻矢 訳
霧月十八日 林俊頴 三須祐介 訳
Ⅲ 根ざすものと漂うもの
ダヤクの妻 李永平 及川茜 訳
子どもの本性 ハ・ジン 小笠原淳 訳
大陸妹 厳歌苓 白井重範 訳
上海から来た女 楊顕恵 田村容子 訳
Ⅳ そしてまた歴史へ
父祖の名 ワリス・ノカン 濱田麻矢 訳
旺角の夜と霧 廖偉棠 及川茜 訳
南洋にて 陳大為 及川茜 訳
西洋 劉慈欣 小笠原淳 訳
解説 濱田麻矢
訳者紹介
著者:劉慈欣、ワリス・ノカン、李娟 他
訳者:小笠原淳、津守陽 他
出版元:白水社
表記:日本語
H195mm×W135mm/360P/2023
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