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物語とトラウマ  クィア・フェミニズム批評の可能性 / 岩川ありさ

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トラウマ的な出来事を経験した人びとにとって、文学や文化は生きのびるための表現となりうるのか—— 多和田葉子、李琴峰、古谷田奈月、森井良、林京子、大江健三郎、岩城けい、小野正嗣といった現代作家の作品を丁寧に読み解き、物語を受けとるという営みとは何か、小説と読者が出会うとはどういうことか、それにクィア・フェミニズム批評はどうかかわるのか、自身の経験とときに重ね合わせながら文学や文化の力を見出していく。気鋭の研究者による、トラウマという語ることがむずかしい経験を語るために物語があるのだということを、そして何より新たな対話の可能性を信じるすべての人におくる、画期的な文学論。 「文学は、語れないことを語ることを可能にすると同時に、人を物語という枠組みから解放する。他人の物語を読み解いていく時の岩川さん独特の真剣さと優しさと丁寧さは、「おまえは生きていてはいけない」というメッセージを受け取らされてしまった人たちのことを一時も忘れることがないからだろう」 ――多和田葉子 ◎目次 序 章  トラウマを語ることはできるか? 第一章  境界の乗り越え方――多和田葉子『容疑者の夜行列車』論 第二章  改稿が示す「奇跡」――李琴峰『独り舞』論 第三章  上演された自伝、聴き手たち――古谷田奈月『リリース』論 第四章  クィアな記憶の継承――森井良「ミックスルーム」論 第五章  「バラカ」から「薔薇香」へ――忘却に抗う虚構の強度をめぐって 第六章  変わり身せよ、無名のもの――多和田葉子「献灯使」論 第七章  記憶と核の時代――林京子の仕事をめぐって 第八章  組みかわる物語――大江健三郎「美しいアナベル・リイ」論 第九章  読みなおすこと、回路をつくること――大江健三郎と「憑在論」 第一〇章 たがいを支えあう言葉の回路――岩城けい『さようなら、オレンジ』論 第一一章 前未来形の文学――小野正嗣『獅子渡り鼻』論 第一二章 記憶を伝えるということ――多和田葉子における「星座小説」 終 章  言葉は生まれ、物語が生まれる ◎著者プロフィール 岩川ありさ(いわかわ・ありさ) 1980年兵庫県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科言語情報専攻博士課程修了。博士(学術)。現在、早稲田大学文学学術院准教授。専攻は、現代日本文学、クィア・スタディーズ、フェミニズム、トラウマ研究。大江健三郎や多和田葉子らの作品を中心に、傷ついた経験をいかに語るのか、社会や言語、歴史との関わりにおいて研究している。本書が初の単著。 著者:岩川ありさ 出版元:青土社 表記:日本語 H196mm×W137mm/480P/2022

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