我々日本に住む者は、なぜヨーロッパやアメリカばかりを追いかけてしまいがちなのか。同じアジアというアイデンティティを持つのであれば、我々はアジアをもっと知り、アジアを理解するべきではないのか。
現在進行形のアジアを日本語話者に向けて発信してきた個人メディア『オフショア』がアジアをキーワードに書かれた文芸作品が集まる文芸誌を刊行しました。
創刊号となる今号は、中国や八重山、奄美、インドネシアについて書かれた寄稿もありますが、台湾に関するものが多く、そしてとても面白かったです。
“ひまわり学生運動”と台湾で盛んな地下メディアとの関係性から、日本における“小さなメディア”(ZINEやミニFMなど)のこれからに思いを馳せた「台湾における市民による地下メディア実践と民主化との関係 ー1990年代の台湾の地下ラジオ運動を軸として」。『馬馬虎虎』や『締め切りの練習』などの著者・檀上 遼さんによる「工場の李さん」では、檀上さんが派遣アルバイトとして働いていた工場の外国人の同僚たちに話を聞いてみたいとはじめたインタビュー集で、今回は工場の現場責任者で台湾から来た李さんに話を伺っています(李さんのお話が面白い!)。そして『オフショア』を主催する山本佳奈子さんが、玉音放送のリサーチや台湾でのレジデンスを経て作られたレコード作品『平行的玉音軌』の制作過程をdj sniffに訊いたインタビューでは、アジアで制作や活動を行うとき、日本が過去にアジア各地を侵略してきた歴史と向き合わざるを得ないことについて書いています。
独特の視点がたくさん集まった、とても面白いアジアの文芸誌が誕生しました。次の号もますます楽しみになる一冊。
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Covid-19 が蔓延し、個々の自由な移動が奪われた今、我々日本語話者はアジアをどのように捉えるのか。また、アジアとは何か――。創刊号では、8名の寄稿者によるアジアにまつわるエッセイ、論考、インタビュー、創作、詩を掲載。定義が複雑で広大なアジア、境界線を引くことのできないアジア、均すことのできないアジアを、そのまま体現する誌面です。
無限に広がり続けるウェブ世界から離れ、じっくり腰据えて読む。「オフショア」は瞬発力がなくてバズらないけれども、五十年後百年後まで読まれることを目指します。
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◎掲載内容
■エッセイ「西成、福清、小白兎」得能洋平
■詩「40 の目」/「わたしはあなたの名前を呼べない」太田明日香
■連載・第一回 イントロダクション「台湾における市民による地下メディア実践と民主化との関係――1990 年代の台湾の地下ラジオ運動を軸として」ローカルメディア研究者 和田 敬
■エッセイ「BALI ~八重山~奄美 アッチャーアッチャー」宮里千里
■創作「シルクロード・サンドストーム」紅坂 紫
■聞き書き「工場の李さん」檀上 遼
■インタビュー「dj sniff『平行的玉音軌』ができるまで――リサーチと思考、作曲の過程をトレースする」 聞き手・構成:山本佳奈子
■エッセイ「理由のないスープ」鈴木並木
編集:山本佳奈子
表紙イラスト:刘璐(リウ・ルー)
デザイン:三宅 彩
出版元:オフショア
表記:日本語
H188mm×W128mm/176P/2022
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*Free shipping on orders over ¥ 10,800
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