














密度と隙間のバランスが絶妙なペン描画と、柔らかな眼差しの写真を通して、ソウルや東京など都市の様々な人、モノ、空間、風景などを記録・収集するアーティスト、ソル・ドンジュさん。そんな彼が、過去と現在と未来が同居するソウルの中でも出色の街“乙支路”の今を姿を記録・収集したのが『乙支路収集』です。
小さな町工場が密集し、夜、迷路のような路地は人目につきにくいところから、鐘路3街にゲイバーが集まる以前からゲイバーがいくつもあったという乙支路。
ゲイタウンは隣の鐘路3街に移ったものの、現在も、乙支路に行けば作れないものはないというほど、職人さんたちの小さな町工場は健在。さらに、乙支路の街を南北に貫く、60年代に作られた韓国初の住宅商店複合施設“世運商街”の建物にも電気や部品のお店が密集し、かつて、住宅だった上階はリノベーションされて、そこには若い世代が運営するショップやスタジオが入居中。印刷、加工、製本所も多数あることから、デザイナーやアーティストのスタジオもたくさんあります。
ただ、路地を散歩するだけでも楽しい街ですが、レトロな街の雰囲気に惹かれて若者も多く集まるようになり、以前は梨泰院にあった、LGBTQの専門書店“サニーブックス”が、乙支路にあるファッションブランド“Ajobyajo”のビルの地下に移転していたり、上記の世運商街のビルにも新しいLGBTQの専門書店を作る動きがあるそうです。またソウルのインディペンデントカルチャーの中心になっている“新都市”や、ギャラリー、レコードショップ、バーやカフェ、そしてもちろん昔ながらの食堂や商店も、職人たちの路地の中に同居していて面白い、ソウルに行った時には必ず立ち寄りたい街です。
ところが、そんな街“乙支路”に突然再開発の話が持ち上がり、世運商街周辺、建物が密集していた路地が、あれよあれよという間に巨大な更地になったのが2019年春。その後、反対運動や、遺跡が出てきた?ことなどもあり、現在はソウル市が整備計画を再検討する方向でストップしているそうですが、この街の歴史や味わい、そこで仕事をしてきた職人さんたちの暮らし、魅力を感じて集まる若い世代の可能性が、まるでそこに何もなかったかのように、オフィスビルやホテル、複合施設に拭い消されてしまわないか心配です。
ソル・ドンジュさんが作った『乙支路収集』は、以前からここで生活し働いてきた人々、魅力を感じて集まってきたお店やスタジオなどから話を伺い、多面的な乙支路の物語を記録する、街への愛情がいっぱい詰まった永久保存本。
ソウルへ行ったらきっと乙支路を歩きたくなるはず。そうでなくても自分の好きな街を、普段よりちょっと違った目で、記録・収集してみたくなるかもしれません。
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青年のデザインと職人の手が出会う「機会の空間」
「ジェントリフィケーション」で消えた乙支路の悲鳴、
30年目の職人が追い出される
https://www.hankookilbo.com/News/Read/A2020082617020003471
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著者:ソル・ドンジュ 설동주
出版元:Bcutbooks
表記:韓国語
H210mm×W152mm/248P/コデックス装/2020
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