スペインから異色のヤングアダルト。
LGBT(性的少数者)の苦悩を書く。
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学校にも家にも居場所を失っていた。
たまたま好きになるのが男の子だったから。
親友に募らせていた恋心を告白したことがきっかけで、オスカルは過酷ないじめに遭うようになる。親友は思わせぶりな態度であったにもかかわらず、態度を一変し、級友たちに言いふらしたのだ。追いつめられたオスカルは自傷行為をくり返すようになる。
やがて、オスカルは強くなるために通いはじめた柔道教室で自由な価値観を持つ青年セルヒオと知り合う。学校のみならず、旧態依然とした男性優位主義者の父親が支配する家のなかにも居場所を見つけられなかったオスカルにとって、すべてを受けとめてくれるセルヒオは精神的な支えとなった。ふたりは自然と惹かれあう。しかし、かんたんにはいかない。積極的に好意を表現するセルヒオに対して、前の失恋を経てどうしても前に踏み込めないオスカル。そんな折、とうとう父親に同性愛者であることがばれてしまい…。
本作は、オスカルとセルヒオの恋のゆくえを読ませる恋愛小説としての醍醐味を軸にしながら、複雑な家庭環境にある思春期の少年の自立を描き、多様な愛を認める社会の実現を問う。思春期の子どもたち、その親、教育現場にいる人たちにぜひ読んでいただきたい作品だ。
いじめを経験したLGBTの割合は過半数にのぼる
近年、“LGBT”ということばも一般に広く認知されるようになり、企業や地方自治体などでも、性的少数者を区別しない社会を目指そうとする動きが高まりつつある。とはいえ、現場レベルではうまくいっているとは限らない現状がある。特に、成長過程にある多感な子どもたちへの対応は難しく、教育現場でも手さぐりが続いている状況だ。
同性愛者やトランスジェンダーといった性的少数者(ここではLGBTとする)のうち、58%が小中学校時代にいじめられた経験があり、21%が不登校を経験していた。自傷行為の経験がある人も10%にのぼった。また、学校の先生がいじめの解決に役立ったと思うか、という問いに対して、67%が「そう思わない」と答えており、性的少数者への学校現場での対応にはまだまだ課題があることを浮き彫りにしている。(ライフネット生命保険の委託により、宝塚大看護学部の日高庸晴教授が実施したアンケート調査による)
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著者:Mike Lightwood
ブロガー、翻訳家。『ぼくを燃やす炎』はネットを通して知り合った若者たちの体験を下敷きに書き上げた初めての小説作品。
翻訳:村岡直子
兵庫県出身、同志社大学文学部卒業。スペイン語翻訳者、講師、校正者。フィクションの訳書に『ラスト・ウェイ・アウト』(フェデリコ・アシャット著、早川書房刊)、ノンフィクションの訳書(青砥直子名義)に『ヴィジュアル版 スペイン王家の歴史』マリア・ピラール・ケラルト= デルイエロ著、吉田恵氏との共訳、原書房刊)、『グッドクライシス』(アレックス・ロビラ著、田内志文氏との共訳、CCC メディアハウス刊)等がある。
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著者:Mike Lightwood
日本語訳:村岡直子
挿画:カナイフユキ
出版元:サウザンブックス
表記:日本語
H210mm×W150mm/並製本/493P/2018
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