














【6699pressが制作した本 その10】
ソウルに2,200軒ほどあった銭湯は、2018年には1,000軒をきっていて、創業30年以上の古い銭湯になると132軒しか残っていないそうです。そう遠くないうちに、全てなくなってしまうかもしれない、昔ながらの古い銭湯。忘れ去られてしまう前に、それぞれの場所でその銭湯が重ねてきた時間を記録しておきたい……。ソウルの独立出版社6699pressのイ・ジェヨンさんが長年温めてきたきた企画がようやく実った本『ソウルの銭湯/서울의 목욕탕』。
【改訂版に合わせて、制作者のイ・ジェヨンさんからの日本語の解説文が入り、また2019年時点で営業しているソウルの銭湯リストが更新されました】
年期を経た丸みのある浴場、湯につかるおじさんたちのほのかな艶、写真家パク・ヒョンソンさんによる、本から湯気が立ち上がってきそうな写真がとても素晴らしいです。
写真の後には、銭湯で出会った人たちの10編のエピソード添えられているのですが、グーグル翻訳をかざして読む簡易な翻訳でも、ソウルの人たちの銭湯への愛着がよく伝わってきます。ページをめくる度、同じように昔ながらの銭湯が減っている東京とソウルがパラレルワールドになっていくような、近しい郷愁にかられることでしょう。
巻末には2019年時点で営業しているソウルの古い銭湯リストも付いて気が利いています。
紙の手触りも、ページをめくる際の綴じの滑らかさも、心地よくて隅々まで愛着が感じられる、永久保存版の一冊です!
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◎制作者による解説
本文抜粋
『ソウルの銭湯』 はフォトグラファーのパク·ヒョンソンさんと一緒に作りました。彼がカメラ越しで見たソウルの銭湯には、様々なことを乗り越えてきた時間の痕跡が写っています。それは決して無機質な冷たさではなく、光が共存する温もりで、限られた未来との対話です。止まった過去の記録ではなく、次の世代に繋がる現在として話しかけているのです。今まで人々の目に止まらなかった側面に光を当て、私たちが目の当たりにするソウルの今をゆったりと語っています。
この本に収めた銭湯もいつかは消えて無くなるでしょう。それでも、この本が願うことは1つ。それは、急激に変わりゆく冷たいソウルの中で30年間以上も温もりを保ってきた銭湯のコレクションとなり、多様な角度から都市を読み取る一つの指標となることです。身近な存在であった銭湯が記憶の中から消されず、ずっとソウルの温かい場所として残ることを願っています。
イ・ジェヨン(6699press)
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商業的なグラフィックデザインの世界で活躍しながら、一方で独立出版社を立ち上げ、LGBTQコミュニティや社会の問題に対して声をあげ、書籍や作品を作り続ける韓国の若いグラフィックデザイナーたち。
世の中に届いていないマイノリティの声を可視化することを目的に、デザイン性が高い優れた本を制作する独立出版社兼グラフィックデザインスタジオ 6699pressを一人で運営するイ・ジェヨンさんもその一人。ここでは、2012年に立ち上げられた6699pressが、これまでに制作してきた本を紹介していきます。
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独立出版社 6699press
同時代を生きるマイノリティ個人の物語に焦点をあて、その声を可視化する本をこれまでに11冊出版している。6699pressの「6699」は、引用符の“”を表しており、社会に必要な言葉、大切な言葉に引用符“”をつけて可視化するという意味が込められている。
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制作:イ・ジェヨン
写真:パク・ヒョンソン
出版元:6699press
表記:韓国語
H235mm×W175mm/272P/2019
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*Free shipping on orders over ¥ 10,800
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