代替服務制の獲得からその先へ
2020年まで、韓国で兵役を拒否した者は否応なく収監の対象とされてきた。
この制度を変えるべく活動を続けてきた──自らも兵役拒否者の──著者および「戦争なき世界」という社会運動団体は、ついに2018年に大法院(日本でいう最高裁)の違憲判決を勝ち取り、2020年の法施行によって「代替服務制」(軍服務ではなく、矯正施設の重症患者や身体障碍者などの生活補助などに従事する)を実現する。
この「代替服務制」を韓国社会が導入するまでのドキュメント、および、韓国の兵役拒否者たちの歴史、また、社会運動団体「戦争なき世界」がその活動を通じ辿り着いた境地、そして現在の「代替服務制」の問題点などをまとめた、迫真の書。
徴兵制が敷かれる社会で兵役を拒否する重圧とはどれほどのものなのか? そして著者たちの諸運動/諸戦術がこれまでの韓国国内の社会運動の語り口をいかに変化させ(そこではフェミニズムの諸実践が大きく影響する)、ひいては韓国社会そのものへと大きな変化を迫ったのか? 彼らの数々の「問い」は、軍拡に邁進する日本社会にも鋭く突きつけられるものである。
◎目次
日本語版序文
プロローグ
1、軍隊を拒否できるって?
2、兵役拒否にも系譜がある
3、良心を問われて
4、平和と非暴力を想像する
5、二等兵が打ち上げた小さな平和
6、多様な「臆病者」の登場
7、父は朴露子を読みはじめた
8、兵役拒否者の賢い(?)監房生活
9、兵役拒否を断念するということ
10、兵役を拒否できるひとがほかにいるだろうか?
11、失敗が道となるように
12、「お前らには銃弾を使うのももったいないから包丁で刺し殺してやる」
13、監獄へいく男、差し入れする女?
14、戦争受益者を止めろ!
15、難民を選択する人びと
16、「兵役法」の変化
17、代替服務制が導入されるまで
18、批判を超え、代案を語る
19、「偽」兵役拒否者、「偽」難民、「偽」トランスジェンダー?
20、代替服務という出発点
エピローグ
原注
訳者解説 森田和樹
◎プロフィール
著者:イ・ヨンソク
1980年生まれ。韓国の兵役拒否者。平和運動団体「戦争なき世界」のアクティビスト。著書に『平和は初めてでして』(パルガンソグム,2021年)、論考に「兵役拒否運動がつくりだした小さな隙間」(『非正規労働』第129号,2018年)など多数。
訳者:森田和樹(もりた かずき)
1994年生まれ。同志社大学大学院社会学研究科博士後期課程所属。専攻は歴史社会学,朝鮮現代史。論文に「1950年代の韓国における〈兵役忌避者〉と日本」(『同時代史研究』第14号、2021年)。訳書にデヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ—クソどうでもいい仕事の理論』(共訳,岩波書店,2020年)がある。
著者:イ・ヨンソク
日本語訳:森田和樹
出版元:以文社
表記:日本語
H196mm×W132mm/272P/2023
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