「女の子はピンク?」「男の子はブルー?」それって大人が決めた世の中のジェンダー観によって、色分けされているんじゃない?
言葉や仕草、身体だけでなく、視覚の中にもいつの間にかジェンダー観が染み込んでいるのかもしれない。“The Pink & Blue Project”というプロジェクトでそんな疑問を作品にした写真家のユン・ジョンミさん。
それは、ユンさんの子どもが5歳になった頃、急にピンク色の服やモノに執着するようになってまるで「ピンク星人」のようだったという子育て体験からスタートしたそうです。その後、韓国をはじめアメリカでもさまざまな人種の子どもたちとその持ち物を撮影してきて、女の子はピンク、男の子はブルーという色分けによるジェンダー区分が国や人種を越えて見事に定着していることに驚くばかりでした。
ピンクとブルーは、写真に写っているそれぞれの子どもが選んだ色であるかもしれないけれど、そのモノを作っているのは大人たち。
実際、1914年のアメリカの新聞では男の子はピンク、女の子にはブルーが推奨されていたのに、第二次世界大戦後になぜかそれが逆転し今に至っているそうで、そのことからも大人が決めた価値観によって、ジェンダーが色分けされているのがわかります。
さて、そんなユン・ジョンミさんの“The Pink & Blue Project”から15年が経ち、そのシリーズを拡張した写真絵本『PINK BLUE』の日本語版が出版されました。
幼い頃は自分で選択するだけでなく、大人から女の子はピンクのモノを、男の子はブルーのモノを与えられることが多く、写真ではピンクとブルーで綺麗に色分けされることが多いのですが、子どもが成長するにしたがって、ピンクとブルーが混じりあったり、他の色が増えてくるそうです。
それは成長するなかで、自分のアイデンティティが芽生え、自分に似合う色、好きな色に、それぞれの個性が現れてくるからでしょう。
『PINK BLUE ピンク&ブループロジェクト』は、幼い頃のピンクとブルーの2色のジェンダー規範を離れ、子どもが成長する中で、自分自身の色を見つけるまでの過程を温かく見守っているそんな写真絵本になっています。
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ジェンダーと記号化された色との関係を印象的に表し、世界を魅了した写真家ユン・ジョンミの「The Pink & Blue Project」。韓国版写真絵本、待望の日本語版。
部屋を埋めつくすピンクの品々と、その真ん中に立つ女の子。一面の青い品々に埋もれるようにして囲まれた男の子。作品を前にした観覧客は、それらの写真に強烈な視覚的ショックを受け、簡単には目を離すことができなくなります。(本文より)
写真家のユン・ジョンミさんが2005年から行う「The Pink & Blue Project」は、子どもたちに好きな色を質問し、その色のものだけを集めて撮影、成長してからも継続していくというものです。全世界で写真展が開かれているこのプロジェクトは、色とジェンダーの関係をはっきりと視覚で感じることができ、多くの人々を魅了しています。
日本語版翻訳は小山内園子さん、解説は写真研究者の小林美香さんです。
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◎著者プロフィール
写真 ユン· ジョンミ
写真によって空間、人、動物、モノの関係を見事に、繊細に描き出すアーティストです。ソウル大学で西洋画、弘益大学大学院で写真デザインを専攻し、さらにニューヨーク市の芸術大学、スクール・オブ・ビジュアル・アーツの大学院で写真と映像を学びました。『The Pink & Blue Project』『空間- 人- 空間』『人- 空間- 関係』『ペット』『It Will Be a Better Day_ 近代小説』など、独特で強い印象を残す展示会を世界の主要都市でたびたび開催しています。2018 年にイルウ写真賞を受賞したほか、2012 年には香港のソブリン芸術財団アジア作家賞、2006 年ダウム作家賞を受賞。現在、フィラデルフィア美術館、ボストン美術館、韓国国立現代美術館など、韓国内外の多くの美術館に作品が所蔵されています。
文 ソ・イオン
ソウル大学で哲学を学び、子どもや青少年のための本を書いたり作ったりしています。傾いた社会にあっても小さな市民たちと肩を並べて、そして親しく、共にありたいと願っています。著書に『公正:私がケーキを分けたなら』、『嫌悪:面白くて言ったことばのどこが悪いの?』 『ウイルス:ホコリより小さなものが世界を変える?』『子ども討論スクール:環境』などがあります。
訳 小山内園子(おさない・そのこ)
東北大学教育学部卒業。NHK 報道局ディレクターを経て、延世大学などで韓国語を学ぶ。訳書に、『大丈夫な人』( カン・ファギル、白水社)、『破果』( ク・ビョンモ、岩波書店)、『多情所感 やさしさが置き去りにされた時代に』( キム・ホンビ、白水社)、すんみとの共訳書に、『私たちにはことばが必要だ フェミニストは黙らない』(イ・ミンギョン、タバブックス)、『彼女の名前は』『私たちが記したもの』( チョ・ナムジュ、筑摩書房)、などがある。
写真:ユン・ジョンミ
文:ソ・イオン
翻訳:小山内園子
装丁デザイン:潟見陽
出版元:タバブックス
表記:日本語
H230mm×W182mm/60P/並製本/2023
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in Japan only. Overseas shipping charges apply.