



古い友人が結婚して、子供が生まれた。
彼に子供のポートレートを依頼されたのだけれど、長い間描くことができなかった。
ただなんとなく気が進まなかった。
僕はいつからか、恋愛と結婚と家族と、そして家族に似たグループの事を信じないようになった。それは必ず失敗するものなのだと思い込みたがるようになった。
今までそれに苦しめられてきて、これからも変わらないように思える。
だから、「自分はそれが嫌いだし、自分には必要ないのだ」と思い込みたくなるのだと思う。
ときどき、そんな自分の態度が子供っぽく思えたけれど、どうしようもなかった。
〜小説より抜粋
イラスト、コミック、エッセイなど多才な手法で、文学やサブカルチャーをサンプリングしながら、自身のセクシュアリティ、ジェンダー、家族、友人、社会やコミュニティついて、悩みながら真摯に描く作家カナイフユキさん。2022年4月に渋谷PARCOで開催された個展『ゆっくりと届く祈り』のミニブック。
著者:カナイフユキ
デザイン:小池アイ子
作品撮影:ただ(ゆかい)
出版元:パルコ
表記:日本語
H254mm×W182mm/48P/2022
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