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エトセトラ VOL.7のテーマは、「くぐりぬけて見つけた場所」。“くぐりぬけて見つけた”という言葉が沁みる、ずっと待っていたような特集です。
今号は、公園のブルーテントに長年住み、女性ホームレスグループを主宰するいちむらみさこさんの責任編集。冒頭には、2013年の年の瀬まで、都内の公園にあるテント村で暮らしていた小山さんという女性が膨大に書き綴っていたノートが紹介されていて、まずそこから読まずにはいられません。
そして、1987年の別冊宝島64『女を愛する女たちの物語』編集した沢部ひとみさんの“女と生きる女の声を聴く「場」を求めて”の寄稿があります。80年代から、90、00年代を経て、今、『日本Lばなし』を編纂する沢部さんの文章は、東京の街の片隅で、その時そこにいたレズビアンの人たちと、小さな居場所(コミュニティ)の一端を知ることができる貴重な内容です。
〈男性優位社会の中で特権を持つ側に立ちやすいGに比べ、Lの存在はかき消されてきたし、「歴史」となる文字資料もビジュアル資料もLの場合、あまりに少ない〉という一文に詰まる思いがします。
『誰かの理想を生きられはしない 〜とり残された者のためのトランスジェンダー史』の吉野靫さんによる“ままならぬ人生に、女友だちはいかが”。大学の自治活動でともに過ごしたチコさんと、当時カラオケで歌ったという中島みゆきの「ファイト!」。
他にも、フェミZINEコレクティブの“場としてのZINEをつくる”。高橋聡子さんによる“誰に戦争は必要か ー 問いかけるロシアのフェミニストたち”など、読みどころが満載です。
最後に今回の特集の中で、井谷聡子さんによる“クィアの「居場所」”の寄稿には、本当に胸を打たれました。クィアの人々にとって自分がありのままでいられる“居場所”について〈クィアな生を生きる者にとって、「居場所」は常に切実で不安定なものである〉と解き、勇気づけてくれる言葉がたくさん綴られていました。
〈クィアとは、規範からはみ出した者を指すカテゴリーであるだけでなく、シスジェンダーと異性愛を規範とし、人々の希望や欲望を縛り、排除しようとする暴力に抗い、ヒビを入れ、染み出し、侵食し、変化させ、変化し続けるあり方であり、運動である〉
ここに書かれた言葉を、僕はきっとこの先何度も読み返すことでしょう。
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生きる場所を奪われないために
くぐりぬけて安心できる場所を見つけるために
公園のブルーテントに長年住み、女性ホームレスグループを主宰するいちむらみさこを責任編集に、今それぞれの地点から考える、場所、ケア、抵抗、そしてフェミニズム。女性ホームレス「小山さん」が遺したノート、海外スクウォットへのインタビュー、エッセイなどで構成。
◎目次
はじめに
ノートの中に見つけた場所 「小山さんノート」ワークショップ
扉テキスト 登久希子
「小山さんが生きようとしたこと」いちむらみさこ
「一年後の追悼展覧会」ナガノハル
小山さんのノートから
「小山さんとの長い長い対話」吉田亜矢子
「けっして自分を明け渡さない小山さん」まさこ
「生き延びるための想像力」花崎攝
「沈黙しているとみなされる者たちの秘密の共通語──共に聴き-翻訳すること」申 知瑛/翻訳:金 友子
「自由意志の領地」ナガノハル
「ノートという場所」藤本なほ子
【エッセイ】
栗田隆子「私の居場所、あるいは『外』で一人でいられる場所」
堅田香緒里「二つの『庭=運動(アヴァン・ガーデニング)』」
沢部ひとみ「女と生きる女の声を聴く『場』を求めて」
井谷聡子「クィアの『居場所』」
李杏理「濁酒が編み出すもの」
大嶋栄子「くぐり抜けたはずなのに――たどり着いてしまった場所」
黒田節子「あてどなくさまようフクシマから女たちへ」
【スクウォット・インタビュー】
マウア(サンパウロ)イバネッチ・アラウージョ「住まいを持たないひとりがいれば、その周りにたくさんの強い運動が生まれる」
(コラム:下郷さとみ)
カナル(ベルリン)「移動しながら、自分らしく生きる場所」
【読者投稿】
あなたが見つけた「場所」
【インタビュー】
上岡陽江「生き延びるための場を守っていく」
笛美「インターネットしか居場所がない誰かとつながるために」
【私たちのコレクティブ】
フェミニスト手芸グループ山姥「政治的な手芸部とは」
フェミZINEコレクティブ「場としてのZINEをつくる」
ひととひと「皿を割るため、女は集う」
特集のおわりに
【寄稿】
高柳聡子「誰に戦争は必要か――問いかけるロシアのフェミニストたち」
長山智香子「ベル・フックスに捧げる」
京極紀子「五輪礼賛、女性活躍? ダイバーシティ?――『レガシー』はこうしてねつ造される」
大橋由香子「『なまじっか』という困った事態――日本で中絶薬が承認されず、同『姓』婚が強要される理由を考える」
吉野靫「ままならぬ人生に、女友だちはいかが」
福田和子「世界一の女性議員比率、ルワンダ」
【連載】
編集長フェミ日記 2022年3月〜4月/いちむらみさこ
ここは女を入れない国:第5回 山と女人禁制(後編)/伊藤春奈(花束書房)
ふぇみで大丈夫 vol.3 Twitterという居場所/ナガノハル
LAST TIME WE MET 彼女たちが見ていた風景 vol.7/宇壽山貴久子
私のフェミアイテム 07 円香
NOW THIS ACTIVIST vol.6 石田郁子
etcbookshop通信(拡大版)
表紙デザイン:福岡南央子
出版元:etc.books
表記:日本語
H210mm×W148mm/128P/2022
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