ハリウッド発のMeToo運動も記憶に新しい今,身の回りのジェンダーバイアスに目を向ける機会が増えている。2016年に韓国で発売され大ヒットしたフェミニズム小説『82年生まれ,キム・ジヨン』は,日本でも翻訳版が異例の売り上げを記録。韓国のフェミニズム文学を入り口に,ジェンダー問題を意識するようになった日本人も少なくないだろう。時を同じくして,国内では医学部入試における女性差別問題が大きな波紋を呼び,2019年のあいちトリエンナーレでは参加作家の男女比を半々にする「ジェンダー平等」が掲げられた。現代を生きる人々の多くが,性別を問わずフェミニズムやジェンダー問題を身近に意識する,あるいは当事者として直面する「フェミニスト・モーメント」を経験している。
そうしたジェンダー不平等を抱える社会に対し,わたしたちはデザインを通じてどんな問いかけをしてくことが出来るのか。本特集では,韓国で行われた女性デザイナーによる意欲的なプロジェクト・展示企画の紹介を起点に,日本,アメリカ,ヨーロッパの新旧女性デザイナーたちによる実践を紹介していく。
しかし,本特集に登場する女性デザイナーたちは必ずしもフェミニストであるわけではなく,全員が意識的にジェンダーの問題と対峙しているわけではない。当然ながらジェンダーにより特定の形やデザインスタイルが規定されることはなく,本特集もまた,ジェンダーとスタイルを結び付けるようなことは意図していない。つまるところ,これからのグラフィックデザインの可能性を考えるうえで,女性や男性といった括りを設けることは,それ自体意味をもたない行為であり,デザインの作り手も受け手も,括弧付きのスタイルや,括弧付きの何かに縛られる必要はないのだろう。本特集では,企画そのものにあえてジェンダーバイアスを設定することで,そんな当たり前に立ち戻ってみることにした。そのうえで,今わたしたちは社会に対してどんな問いを立てていけるのか,デザインの真価が問われている。
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・韓国─日本 ジェンダーと女性デザイナーたち
・牡丹とカニ:シム・ウユン個展
・ソウルの女性デザイナーたち
・フェミニストデザイナーのワーキングライフを変える/フェミニストデザイナー・ソーシャルクラブの活動
・韓国とフェミニズムについて フェミニズム・リブートから現在まで
・「女性だから」からの解放 平林奈緒美の仕事
・LGBTという言葉が必要無い社会を目指して
・先駆者たちのアメリカ ふたりの女性デザイナー
・女性たちのモダニズム タイポグラフィと女性たち
・女性たちとバウハウス 山脇道子の見たワイマール文化とユートピアの学校
・YELLOW OBJECTS 黄色い物体 社会的不正義に対して団結し,自由を求めて戦うポスター
など
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企画・構成:アイデア編集部
出版元:誠文堂新光社
表記:日本語
H297mm×W225mm/168P/2020
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*Free shipping on orders over ¥ 10,800
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