2017年に創刊された、台湾のノンフィクション・コミック雑誌。各号のテーマに合わせ、アジア各地の作家のオリジナルコミックを収録してきました。4号目となる今号のテーマは「失語と詩語」。
暴言や暴力に直面し失った言葉、どうしようもなく身体の内側から溢れてくる詩的な言葉、そんな言葉にならない言葉を、台湾、香港、中国、マレーシア、韓国の作家がコミックで抽象的に描き出し、心の内側にある感情を見事に表現しています。さらに作品の世界観に合わせた、絵と紙とインクの色合いを活かした装丁も素晴らしい雑誌です。
巻頭は、京都で日本の漫画の影響を受けて育ち、香港に戻って大学で芸術を学び作家活動を続ける柳廣成さんの「殞落青春 Fallen Youth」。雨傘革命や2019年の抗議デモ後の香港、退廃的で不安があり、何も達成していない若者を描いています。作者の個人的な体験から作られた物語。
村上春樹の『猫を棄てる 父親について語るとき』の本の挿画を手掛け、日本でも知られる台湾のイラストレーター高妍さんの「無聲的大雨 The Rain Falls in Silence」は、届かない愛を抱える人が大雨の中、歩いても歩いても、たどり着けない思いを描いたサイレント・コミック。
毎号、世界の優れたサイレント・ドキュメンタリーコミックを紹介する連載では、韓国の作家ヒョン・ヤスンさんの「海女」を収録。
ヤスンさんの祖母の物語であり、済州島の海女さんたちの暮らしを描いています。1941年、臨月になっても厳しい生活のために、海に潜らなければならなかった祖母が、海の中で破水し、なんとか這い上がった岩場で、仲間たちに助けられながら、子供を出産した一節が綴じられています。
北京で活動する作家、煙囪さんの「AM8:00-PM9:00」は、北京の画家の平凡な日々、家で猫を描いたり、午後にのんびりと展覧会を見に行ったり、散歩をしたり、夜にはもち米を買いに行ったり……「過去はありません、未来はありません」という街中のグラフティに足を止めた彼は何を思ったでしょうか。
高雄の作家、曾耀慶さんの「3/2」は、身体的には男性だったけれど、子供の頃からぼんやりと女性である自分を思い描いていた主人公の不確実なイメージの変化、感情と欲望を描いています。
参加アーティスト
柳廣成、歐泠、阿多、高妍、ヒョン・ヤスン、煙囪、不然你來當小寶、NOvia、陳繭、曾耀慶
出版元:慢工文化事業有限公司
編集:黃珮珊
装丁デザイン:何佳興
表記:中国語(繁体字)、英語
H260mm×W190mm/180P/2020
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