昔の日本は「独身」が大半だった! 結婚の概念を覆す驚きの日本史
日本の歴史を貫く「ひとりみ」の思想——
結婚は特権階級の営み、実は結婚できない人が大半だった!
卑弥呼から古事記の神々、僧尼、源氏物語の登場人物、大奥の女性権力者など、古代から幕末まで、多様なひとりみたちの「生」と「性」を追う。
「独身」や「結婚」、「家族」の概念を覆す、驚きの日本史!
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「ひとりみ」を肯定的に描く日本の大古典
「生涯未婚率の上昇」や「晩婚化」が叫ばれて久しい日本です。
また一方では、「少子化」も問題となって、政府は躍起になって少子化対策をうたっていますし、皆さんの中にも「少子化は問題だね。国力に影響する」と憂えている人もいるでしょう。
中には、ひとりみが増加するのも少子化も「先進国の宿命だ」とか「女が高学歴化したせいだ」とか「働く女が増えたせいだ」などと思っている人もいるかもしれません。
しかし実は、千年以上昔から日本人はそれを理想としていた……というのは言い過ぎにしても、「子などないほうがいいし結婚なんてしなくていい、それが理想の生き方である」という考え方が、文化の中に脈々と受け継がれていた……。
そんなことを言うと、意外に思われる人もいるでしょう。
無理もありません。
日本には「結婚して子を持って一人前」という考え方が、とくに年配者の中に根強くあるのも事実です。
しかし古典文学や史料を読んでいると、どうも昔の知識人の中にはそうとばかりは言えない考え方があったことに気づくのです。
というのも日本で一番有名な古典文学『源氏物語』では、物語最後の主人公の浮舟が、男を拒絶し、見知らぬ尼たちのもとで生きる決意をしている。尼になり、「これで俗世の暮らしをせねばいけないと思わなくて済むようになった、それこそが実に素晴らしいことだと、胸の晴れる気持ちになられた」(〝世に経べきものとは思ひかけずなりぬるこそは、いとめでたきことなれと、胸のあきたる心地したまひける〞)(「手習」巻)
つまり結婚しないで済むと思うと、心がすっきりしたというのです。
そんな『源氏物語』が〝物語の出で来はじめの親〞(「絵合」巻)と称する『竹取物語』のヒロインかぐや姫は、五人の男たちやミカドの求婚をも袖にして月へ帰っていく。
そういう物語が日本では、子ども向けの童話にも描かれ、親しまれているのです。
(はじめにより)
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前近代の「ひとりみ」について調べ、考え、書いていると、現代日本人の想像しがちな「伝統的な家族観」なるものが、いかにまやかしであるかを痛感します。
この思いは、古典文学を読むとたいてい感じるものなのですが、「ひとりみ」にフォーカスしても、やはり……という感じでした。
再三触れてきたように、十六・十七世紀に至って「皆婚社会」(鬼頭宏『人口で読む日本の歴史』)と呼ばれる、誰もが生涯に一度は結婚するものだという社会が訪れる以前には、結婚は特権階級にのみゆるされる営みで、大半の人は、ひとりみのまま生涯を終えていた。といっても子を持たぬというわけではなく、シングルマザーやシングルファザーも多かったのです。
「ひとりみ」はいわば社会のマジョリティでした。
(「おわりに」より抜粋)
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著者:大塚ひかり
出版元:左右社
表記:日本語
H186mm×W130mm/232P/2024
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