デモでたたかう若者は何を守りたかったのか
絶望的な状況にあっても人々は、文学を読み、音楽を聴き、未来を思い描く。迷いや葛藤を抱えて生きる人々、そして失われゆく都市の姿を内側から綴ったノンフィクション。
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それでも香港はそこに生きる人が愛さずにはいられない文化が息づく街である。本土に吞まれていく旧植民地の矛盾や葛藤、そして魅力を柔らかく繊細な感性で描く。
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都市から自由が消えていく様に、ともに迷い、引き裂かれつつも、 そこで生きようとする人々の姿に迫っていく。ミレニアル世代の著者が記録する激動の一九九七年から二〇二〇年。
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目の前で消滅していく都市の中で自分の居場所を見つけることが何を意味するのか、脈打つようなデビュー作だ
ー ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー
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著者のカレン・チャンさんは、故郷の政治や文化を取材した経験や、故郷の変貌を見守る音楽家、抗議者、作家へのインタビューから、香港にとって、ひいては彼女自身にとって、重要な瞬間にある都市の内面を綴っている。
1997年に中国に返還される直前に生まれたチャンさんは、自分がどのような香港に属しているのか、疑問を抱きながら育ちました。英語圏のインターナショナルスクールに通う中産階級のコスモポリタンに馴染めず、伝統的で機能不全に陥りがちな家族の保守的な価値観にも抵抗がありました。
本書での鮮やかで個性豊かな物語を通して、チャンさんは自身の青春と同世代の青春の二重の物語を紡いでいる。最近の抗議デモのトラウマ的な余波に揺れる街で、信頼できるメンタルヘルスケアを見つけるのに何年も苦労したことを、胸を打つような率直さで語っている。また、香港の活気あるカウンターカルチャーを記録し、インディーズ音楽とクリエイティブシーンの奥深く、奇跡的な瞬間も捉えている。そして、香港に属するということがどういうことなのか、ようやく理解できるようになったのは、抗議デモの現場だった。
回顧録とルポルタージュが絶妙にブレンドされた『わたしの香港 消滅の瀬戸際で』は、一人の若い女性と一つの都市が、時には矛盾する道を歩みながら、自分らしさを獲得していく過程を並行して描いている。
◎目次
■はじめに
■断り書き
■二〇二一年、香港の地図
第一部
■一九九七年
■祭りとしきたり
■パラレル・ワールド
第二部
■二〇〇三年
■二十二人のルームメート
■二〇一四年
■五里霧中
第三部
■インターナショナル・スクール出身者
■言語を裏切る者
■工場へようこそ
■煉獄の都市
■謝辞
■訳者あとがき
■原註
◎著者プロフィール
著者:カレン・チャン Karen Cheung
一九九三年中国深圳に生まれ、香港で育つ。香港大学で法学とジャーナリズムを専攻。卒業後は、編集者・ ジャーナリストとして活動する。香港のデモやカルチャーシーンを取材し、国内外に向けて執筆。「ニューヨーク・タイムズ」、「フォーリン・ポリシー」などに寄稿している。「ワシントン・ポスト」、「エコノミスト」で年間ベストブック(二〇二二年)に選出されるなど、反響を呼んだ本書がデビュー作となる。
訳者:古屋 美登里 ふるや・みどり
翻訳家。著書に『雑な読書』『楽な読書』(ともにシンコ ーミュージック)など。訳書にアフガニスタンの女性作家たち『わたしのペンは鳥の翼』(小学館)、エドワード・ケアリー『吞み込まれた男』『飢渇の人 エドワード・ケアリー短篇集』『おちび』、〈アイアマンガー三部作〉『堆塵館』『穢れの町』『肺都』、『望楼館追想』(すべて東京創元社)、デイヴィッド・マイケリス『スヌーピーの父 チャールズ・シュルツ伝』、デイヴィッ ド・フィンケル『帰還兵はなぜ自殺するのか』、マーク・シノット『第三の極地 エヴェレスト、その夢と死と謎』(すべて亜紀書房)、ジョディ・カンター他『その名を暴け #MeToo に火をつけたジャーナリストたちの闘い』(新潮社)など多数。
著者:カレン・チャン
日本語訳:古屋 美登里
出版元:亜紀書房
表記:日本語
H180mm×W130mm/416P/2023
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