
2022年『大都会の愛し方』で、ブッカー賞インターナショナル部門にノミネートされた作家パク・サンヨン。『大都会の愛し方』では、絶えず失敗しながらも誰かを愛そうと身を投じる20代の熱い日々を、『1次元になりたい』では、初恋の心の揺らぎと言えない秘密を抱えて傷ついた10代の頃を描いてきました。最新作『信仰について 믿음에 대하여』では、いつのまにか社会人になり、自立して仕事も愛も得たいのに、得ることが難しい30代の苦悩を描いています。
社会的な距離をとることを強いられたパンデミックの中での孤立感。その中でさらに差別され排除される少数者たちの苦痛が物語に切実に折り込まれた『信仰について』は、これまでの作品に比べても、社会問題を直視する視線が一層鋭くなり、パク・サンヨンさんの新しい代表作といえる一作になっています。
肩を組む青年たちの後ろ姿、帯を取ると腰にも手を伸ばしている姿になる素敵な表紙を描いたのはloneliness booksでも作品集を取り扱っているアーティスト、イ・ウソンさん。
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私は未来のようなものに、むやみに期待しないことにした
「信仰について」より
チョルは、一度も疑ったことがなかった恋人Yの裏切りと彼の寂しい死を経験したことで、今までの自分の人生に疑問を感じ、写真家の仕事をやめた。その後、Yの葬儀場で偶然出会ったハンヨンと恋に落ち、同居をするようになり、梨泰院で居坂屋を経営するという長年の夢を果たして、元気を取り戻しつつあったが、それも束の間の幸せだった。世界をさらった伝染病のために、店は廃業の危機に瀕し、叔母の死で落ち込んだハンヨンも部屋を飛び出し、チョルは再び人生に対する信仰を失ってしまう。
今回の小説の主要人物の中で唯一、40代に近い主人公チョルの声を通じて伝わる物語は、よりよい未来への努力が簡単に水の泡になってしまうこと、積み重ねた関係も砂城のように崩れてしまう人生の無情さを表わしています。誰もがいつも寂しく、儚い存在という真実をささやくような物語。
「パク・サンヨンの小説を読む時、人生で深い孤独を感じた瞬間が思い浮かぶ。いつ壊れてもおかしくない大きなひびの入ったガラス窓を眺める人。そのガラス窓の外には大雪が降り、その中を手に触れることができない愛しい人が歩いていく。その寂しくも美しい風景を、私はこの本の中でずっと眺めていた。〜チェ・ウニョン(小説家『わたしに無害なひと』)
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著者:パク・サンヨン 박상영
出版元:문학동네
表記:韓国語
H200mm×W133mm/292P/2022
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