














小沼理さんの日記集『1日が長いと感じられる日が、時々でもあるといい』の表紙絵を描いた韓国の漫画家、チョン・イヨンさんと作家、イ・ドンウンさんの共著『ジン、ジン 진, 진』。
息子の友人だと思っていた同級生が恋人だと知った母と息子とその友人3人のそれぞれの葛藤、セクシュアルマイノリティの物語を描いた『移ろう季節の中で』で2013年にデビューしたイ・ドンウンさんとチョン・イヨンさん。共作で『あなたのお願い』『니나 내나』『yoyo』『土曜日の世界』など、悲しみを抱えながらも、ささやかに一歩を踏み出そうとする人々の物語を紡ぎ続けています。
『ジン、ジン 진, 진』は、映画的な絵の構図と行間の描き方もとても印象に残る二人の新作コミック。格差社会の底辺で社会的な安全網にもかかれず生きる20代と40代、世代が違う二人の女性のそれぞれの物語です。
以前『『絶望ラジオの若者たち』というドキュメンタリーを観たことがあります。競争が激しい社会の中で、経済的な理由で不平等に扱われ苦しい状況にある、韓国の若者たち。彼らがその声を寄せ、人気を白しているポッドキャスト“絶望ラジオ”という番組のスタッフと、リスナーの若者たちを追ったドキュメンタリーでした。
その中で経済的に苦しい若者が家賃の高いソウルで暮らすために住んでいたのが、元々は大学や公務員を目指す受験生のための自習室だった3畳ほどの部屋“考試院(コシウォン)”。ドキュメンタリーの中では、2015年時点で40万人の若者が“考試院”に住んでいるとレポートされていました。
『ジン、ジン 진, 진』に登場する20代の女性ジナが暮らすのも“考試院”。日中は清掃員、夜は運転代行業をしながら生計をたて、大学進学を目指す弟の世話もしている。そんな中で、関係が良くないまま亡くなった父親のこと、考試院の隣人の自殺未遂など様々な出来事に直面しながら、めげずに懸命に生きる彼女の青春が描かれています。
もう一人の物語は、我慢することばかりだった青春時代を経て、一人で麺屋を切り盛りする40代になったスジンが主人公。体調が良くなく更年期の薬を処方してもらおうと訪れた病院で妊娠していることを知って…
◎出版社レビュー
二人の主人公の悩みは、今を生きる私たちのすべての悩みと共通するものがあります。私たちは、生まれたときからこの世を去るまで、たくさんの生と死を目にして、かけがえのない存在の喪失を経験します。
「ジン、ジン」は、考試院、カラオケ、飲食店など誰にもおなじみの場所を舞台に、死の重さ、喪失感に押しつぶされずに持ちこたえる二人の女性の人生を描いています。一緒にご飯を食べて、歌って、手をつないで歩く、そんなささやかな出来事を支えにしながら、ジナとスジンが困難な日々を乗り越えようとする姿はとてもリアルです。
「ジン、ジン」で描かれているのは、絶えない苦難の中でも再び新しい一歩を踏み出す二人の姿です。著者は、日常の中での生と死、いつか誰もが直面する現実に耐えるために、一緒に歌いましょうと手を差し出す。新しい一日を生きていく力が、声の限り歌う歌声から伝わってくる。「誰一人倒れることがないように、少しずつ体を傾けて、お互いを支えている」(キム・ヘリ、「おすすめの言葉」)二人の主人公の和音が美しく調和され、読者に大きな響きを与えることでしょう。
文:イ・ドンウン 이동은
絵:チョン・イヨン 정이용
出版元:창비
表記:韓国語
H195mm×W135mm/212P/2020
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